京劇

京劇とは?

1790年、大の演劇好きの清の乾隆帝が八十歳を迎えるに当たり、塩を売買する商人たちが誕生祝いとして流行りの劇団を北京に連れてきました。この劇団というのが「四大徽班 sì dà huī bān」のひとつ「三慶班」と言う劇団で、残りの劇団も相次いで上京し、成功を収めました。その後、湖北省から北京にやってきた俳優たちも合流し、安徽と湖北の地方劇を格として、昆劇や梆子 などの地方劇の要素を取り入れつつ形成されたものが京劇です。
また北京の京劇(京派京劇)は正統的伝統を重んじ、上海京劇(海派京劇)は創造的で革新的、と地域による違いもあります。
ちなみに、『京劇』という名称が定着したのは1949年の新中国建国以降で、それ以前は二黄(にこう:二簧 èrhuáng)、皮黄(ひこう:皮簧 píhuáng)、京戯(けいぎ:京? Jīngxì)、平劇(へいげき:平? píngjù=北京が北平と改称されていた時代の呼称)、国劇(こくげき:国? guójù)など様々な呼称があります。

四大徽班
安徽省一帯の地方劇団の中の、三慶班、四喜班、春台班、和春班のこと。
三慶班は起承転結のある大きい芝居、四喜班は昆劇の芝居が得意で、春台班は勢いのある若手の俳優が多く、和春班は立ち回りの芝居に定評がありました。

京劇の決まり事

役柄 行当 hángdang

テナー。男性役。
老生
テナー。中年以上の宰相・忠臣・学者などに扮する役。必ず付けひげをつけます。

  • 安工老生 ān gōng lǎo shēng :唱が主
  • 衰派老生 shuāi pài lǎo shēng : 動きが主
  • 靠把老生 kàobǎ lǎo shēng :唱も動き もある鎧を纏う役

武生
武将や侠客など立回りをやる男性役で、地声を使います。

  • ?靠武生 cháng kào wǔ shēng :甲冑を着た武 将役
  • 短打武生 duǎndǎ wǔ shēng :動きやす い服装の侠客役など

小生
カウンターテナー。若い男性役。

  • 扇子生 shànzi shēng :貴公子役
  • ?生 qióngshēng :貧乏書生役
  • 雉尾生 zhì wěi shēng :年少の英雄役
  • 武小生 wǔ xiǎo shēng :青年武将役
ソプラノ、アルト。女性役。
正旦 zhèngdàn
良家の夫人役。唱が中心。

花旦 huādàn
活発な女性役。仕草が中心。

  • ??旦 guīmén dàn :未婚の令嬢役
  • ?辣旦 pōlà dàn :毒婦や娼婦役など
  • 玩笑旦 wánxiào dàn :にぎやかでおてんば な女性役

武旦 wǔdàn
立ち回りをやる女性役。

刀?旦 dāomǎdàn
鎧を纏う。女将軍な ど。仕草と唱のバランスは同じくらい。

老旦 lǎodàn
老婦人役。

彩旦 cǎidàn
女道化役。

バリトン。個性の強い男性役。
正? zhèng jìng
高官などでも個性が強い役。唱が中心。

副? fùjìng
将軍や侠客などでも剛毅、豪放な役。仕草とせりふが中心。

武? wǔ jìng
立ち回りが中心。 パワー全開で常人にはない性格の役。

道化役や陰険な小人物役など。
文丑 wénchǒu
たいていおどけている役柄 が多いが、皆善人とは限らない。仕草とせりふが中心。

武丑 wǔchǒu
性急な話し方や動きが滑稽で威勢がいい。立ち回りが中心。

せりふ

韻を踏む中国独特の「韻白」と、北京語の「京白」があり、韻白と京白が混ざったのを「韻京白」といいます。
一般に、「韻白」は身分、地位が高いもの、「京白」は庶民などが使います。

衣装

京劇の舞台衣装は中国の封建社会をベースにして、人物の身分、地位、年齢などの特徴を表しています。
衣装の色彩は、黄、赤、緑、白、黒を「上五色」(正五色)、紫、青、ピンク、薄緑、茶を「下五色」(副色)と言います。
生地は緞子などを使い、金、銀の糸で龍や鳳凰、動物、魚、虫、花、雲、水、吉祥紋様などの刺繍が施されています。衣装のデザインは人物の性格を象徴する重要な要素で、登場人物の地位や身分を表しています。

化粧

俊扮 jùn bàn
肌色はオレンジ色に近く、目元と眉間もオレンジ系。老け役は肌色も目元も薄くしま す。
文生 眉間を半円に描く
武生 眉間をやじり型に描く
額、鼻筋、顎のTゾーンは真っ白にする。肌色はピンク。目元は赤系。
若い役ほど目元の赤を濃くします。
?? liǎnpǔ
花? 原色で派手な顔全体に色がついた化粧。各色にはそれぞれ下記の意味があります。
忠義
実直
勇猛
義侠
乱暴
原黒
神聖

音楽

京劇の節回しは西皮 xīpí と二黄 èrhuáng の二種類があります。
楽器演奏ははやし方といって、管弦楽と打楽器に分かれます。

管弦楽:文? wénchǎng

四大件 sì dà jiàn と呼ばれる京胡 jīnghú:高音胡弓、月琴 yuèqín:琵琶、京二胡 jīng’èrhú:中音胡弓、三弦 sānxián:三味線と笛子 dízi:横笛、笙 shēng、?? suǒ nà:チャルメラ、海笛 hǎi dí:高音チャルメラ などがあります。

打楽器:武? wǔchǎng

板鼓 bǎngǔ:皮の裏に木を張った小太鼓、大? dà luó:大銅鑼、小? xiǎoluó:小銅鑼、?? náobó:にょうはち、堂鼓 tánggǔ:太鼓、水? shuǐ bó:中シンバル、大? dà náo:大シンバル、?? chǎ guō:小シンバル、碰星 pèng xīng:金属性カスタネット などがあります。

代表的な演目

文昭関?文昭? wén zhāo guān

「臥薪嘗胆:?薪?胆 wò xīn cháng dǎn」の故事で有名な呉越の死闘の物語。
父と兄を国王に殺された伍子胥(ごししょ)が、復讐を誓い、国外に亡命しようと国境まで逃げたが、すでに関所には人相書きが配られていて、通過できない。そこを、東皋公(とうこうこう)にかくまわれ、東皋公は、自分の友人を伍子胥に変装させておとりにし、そのすきに伍子胥を関所から逃げ出させた、という筋書き。

覇王別姫?霸王?? bàwáng bié jī

「四面楚歌 sì miàn chǔ gē」の物語。
秦の始皇帝が死んだあと、各地で英雄が挙兵したが、最後に項羽と劉邦の二人が勝ち残った。項羽は、戦場では無敗を誇る勇将だったが、謀略や諜報戦で劉邦側に負け、垓下の地で劉邦軍に包囲された。ある夜、四方の敵陣から故郷の楚の歌が聞こえてきた。故郷がすでに、敵軍に占領されてしまったと勘違いした項羽は、自分の最後が近いことを知り、妃の虞姫(ぐき)と別れの酒宴を開く。虞姫は剣舞いを舞ったあと、項羽の足でまといにならぬようにと、自害して果てるという筋書き。

虎牢関?虎牢? hǔ láo guān

三国志の中の物語。
董卓(とうたく)征伐を目指す曹操(そうそう)が、劉備・関羽・張羽の協力を得て、対する董卓軍の総大将・呂布と戦う物語。

空城計?空城? kōngchéngjì

三国志の中の物語。
諸葛孔明の部下・馬謖(ばしょく)は、孔明の命令に違反して独断専行したため、名将・司馬仲達ひきいる魏(ぎ)軍に大敗し、司馬仲達は、全軍をあげて、がらあきになった孔明の本陣を攻撃。
孔明の本陣には、わずかな兵しかおらず、孔明は、わざと城門を開けさせ、自身城門の上にのぼり、琴を奏で、無防備のまま魏軍を迎えるという戦略にでると、これまで孔明の奇計に苦杯をなめてきた司馬仲達は、あまりにも無防備な城を見て、城内に孔明の罠が仕掛けてあるに相違ないと危惧し、撤退したという物語。

白蛇伝?白蛇? bái shé chuán

四川省の山奥で修行をした女仙・白素貞は、美女の姿をしているが、実は白蛇の妖怪。白素貞は人間界の恋愛にあこがれ、妹ぶんの小青(実は青蛇の妖怪)を連れて、西湖の断橋に遊びに来たところ、そこで人間の男・許仙と出会い、恋に落ちる。白素貞は自分の正体を隠したまま、許仙と夫婦になった。
だが、人間と妖怪の結婚は自然の摂理に反すると、金山寺の高僧・法海和尚が、二人の仲を裂こうと、あれこれ画策する。
白素貞は、法海のくりだす仏法の神々と戦うが、最後は負けて、西湖の塔の下に封じ込められてしまう。その後しばらくして、小青に助けられる、という筋書き。

西廂記?西?? xī xiāng jì

時代は唐、受験生の張君瑞(ちょうくんずい)は、科挙の試験を受けるための旅の途中で、蒲東(ほとう)の地を通りかかり、普救寺に宿をかりた。そこで、今は亡き先の総理大臣の娘、崔鶯鶯(さいおうおう)と出会い、一目惚れした。
張君瑞は、崔鶯鶯の女中である紅娘(こうじょう)に、自分たちの仲を取り持ってくれるよう頼み、叱られる。
ちょうどそのとき、軍人の孫飛虎(そんひこ)が反乱を起こし、美貌の令嬢である崔鶯鶯を手に入れるため、普救寺を包囲、鶯鶯の母親は、誰でもいいから孫飛虎の軍を撃退した者に娘を嫁がせることを約束した。張は、友人である白馬将軍・杜確(とかく)に手紙を書いて救援を頼み、孫飛虎軍を撃退。
鶯鶯の母親は、一介の受験生に娘を与えることを嫌がり、約束を破って、張君瑞と鶯鶯を義理の兄妹とすることでごまかしたが、張君瑞は紅娘に助けを求め、同情した紅娘が、張君瑞が書いたラブレターを鶯鶯に渡す。
張君瑞は夜、壁を乗り越えて鶯鶯の部屋にしのびこんだが、鶯鶯に叱られて追い返され、憂悶のあまり病気になる。その後、鶯鶯は紅娘の手引きで、夜こっそり張君瑞の部屋にしのんできた。
鶯鶯の母親は、自分の娘が張君瑞と関係を持ったことを察し、手引きした紅娘を鞭で打った。紅娘はひるまず、鶯鶯の母親が約束を守らなかったことこそ悪い、と抗弁した。鶯鶯の母親はやむをえず、張君瑞が科挙の試験に合格したら、今後こそ二人の結婚を認めると約束した、という筋書き。

大鬧天宮?大?天空 dà nào tiān kōng

西遊記の中の物語で、孫悟空が、三蔵法師の弟子になる前の話。
天帝は、下界の暴れ者・孫悟空を丸めこむため、彼に「斉天大聖」(天と同格)の称号を与える、と甘い言葉で騙す。
その後、西王母が蟠桃会(ばんとうかい)を開いたとき、悟空は招かれなかった。彼は真相に気付いて怒り、天上界に忍び込み、神々の桃や酒や仙薬を盗み食いしてうさを晴らしたあと、下界に帰った。
天帝は天将天兵を下界に攻め込ませるが、悟空はこれを撃退する、という筋書き。

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