内傷

内傷=精神素因・生活素因・内性素因

精神素因・七情
七情とは喜・怒・思・憂・悲・恐・驚の7種類の感情の変化を示したものです。七情の刺激は直接内蔵に影響して疾病を引き起こす原因となるので、「内傷七情」とも称されます。

ただし、これら7種類の感情の変化は外界の事柄に対応する精神の反応であって、正常な状況においては、発病の素因となることはあまりありません。病因としての七情になるのは、急激で強烈な精神的衝撃や長期間に及ぶ持続的な精神刺激によって起きる感情の変化です。

七情と五臓の関係
7種類の異なる感情は、それぞれ臓器の精気によって維持されており、五臓に異常が発生すると感情にも変化が起こります。

感情と五臓、気の関係
心臓 気が緩む
肝臓 気が上がる
脾臓 気は結ぶ
肺臓 気が消える
腎臓 気が下り乱れる

生活素因・飲食と労逸
生活習慣を健康的に維持する基本的な条件として、質のよい適量の食事・適度な運動・休養をバランスよくとることが必要となります。故に、節度ある生活習慣は疾病の予防となり、節度のない生活は疾病発生の原因となります。

生活習慣の中で疾病の原因となるものに、飲食不節と労逸があります。
飲食不節の中では、食べ過ぎと偏食による疾病があらわれやすくなっています。食べ過ぎは脾胃を痛め食積を形成し、肥甘厚味の過食や飲酒の過度は湿熱を発生させます。また、辛味の過食は胃熱を発生して陰液を消耗し、反対に生冷の過食は、脾陽を障害して寒湿を内生させます。

労逸には、過労・心労・房事過多・安逸の過度が含まれます。労逸の「労」とは、精神的・肉体的過労を意味し、この中には肉体的過労・精神的過労・性行為の過剰が含まれます。「逸」とは、安楽すなわち休息を好んで身体を動かさない運動不足という意味です。

過労は、気を消耗し全身の機能を低下させ、心労は、心神を消耗したり脾の運化を障害し、房事過多は、腎精を消耗し、運動不足は、気血運行を障害したり脾の運化を失調させます。

内性素因・痰飲と淤血
人体は飲食物や自然界の清気などを原料に、気・血・水(津液)を生成代謝しています。この気・血・水(津液)の代謝において、飲食が不適当であったり、臓器・経絡の代謝・循環過程に異常が起きると、体内に異常代謝物質が発生してしまいます。

これらの気血水の異常をそれぞれ「気滞」、「淤血」、「痰飲」と呼んでいます。気滞・淤血・痰飲は気・血・水(津液)に比べて運行されにくく、正常な生理活動を妨げて、新たな代謝障害を発生させます。

痰飲
痰飲とは、水液代謝の障害によって形成され人体の局部に滞留した、異常体液を指しています。また、痰飲は痰と飲とに区別され、粘稠で混濁な物を「痰」と呼び、希薄な物を「飲」と呼んでいます。
痰飲は、種々の病因によって発生しますが、主に、肺・脾・腎・三焦などと関係しています。これらの水液代謝に関与する臓腑経絡が障害されると、痰飲が発生 します。肺や胸部に滞留すると、咳嗽・喘息などがあらわれ、胃や腸間に滞留すると、胸悶・悪心・嘔吐・胸腹部の脹満などがあらわれます。心に影響すると精 神障害や眩暈があらわれ、肌や経絡に滞留すると浮腫や疼痛・麻痺などの症状があらわれます。

淤血(おけつ)
淤血とは、血液の運行が緩慢になって臓腑や経絡内に停滞し、および経脈から離れて滞留した血液(いわゆる内出血に相当するもの)の総称です。
淤血は、寒邪・熱邪・過労・七情・外傷などの病因が、血液循環に関与する心・肺・肝・脾・血脈などの臓器機能を障害することによって形成されます。
淤血が形成されると、正常な血液の持つ滋養作用が減退するほか、血液の運行が影響されて疼痛や出血あるいは腫塊などが出現します。しかし、これらの症状は淤血以外の気滞や痰飲が原因となることもあるため、淤血が原因となってあらわれる症状の特性は次のようになっています。

疼痛
漢方の疼痛に対する考え方は、“不通則痛”「通ずればすなわち痛まず、通ぜざれば則ち痛む」といわれてお り、経絡系統の滞りが疼痛を発生させると考えます。経絡系統を渋滞させるものが、気・血・水の異常代謝物である気滞・淤血・痰飲ですが、渋滞する物質に よってそれぞれ痛み方が違います。
◆痛みの判別

気滞 脹痛、遊走性 実証 拒按
淤血 刺痛、固定性 虚証 喜按
痰飲 重痛

腫塊
淤血による腫塊は、固定され移動しにくく、おさえると強い痛みがあります。

出血
出血は淤血以外にも、統血不足や血熱が原因となっても起こります。
淤血による出血はほかのものに比べ、血液の色が暗紫色でときには血塊が混在します。

その他
淤血のときには、顔色は浅黒く、皮膚は甲錯(乾燥して光滑がなく、きめが粗い)し、皮下の血脈にはチアノーゼがよく見られます。舌質は暗紫色でお斑がみられることがあり、脈象は渋ってスムーズではなくなります。

コメントを残す