六気
大自然の気象の状態をあらわすのに、風、寒、暑、湿、燥、火という6つの気象現象をとらえ、これらをまとめて「六気(ろっき)」といいます。
季節 | 期 間 | 季節の特徴 | 気象 |
春 | 2月~4月 | 温かくなり始める季節で、春温ともいわれる | 風 |
夏 | 5月~7月 | 最も熱い季節で、夏熱ともいわれる | 暑・火 |
長夏 | 7月 | 夏の中でも湿度が高い季節 | 湿 |
秋 | 8月~10月 | 涼しさと乾燥が始まる季節で、秋涼といわれる | 燥 |
冬 | 11月~1月 | 最も寒い季節で、冬寒といわれる | 寒 |
六淫
外感の中でも、特に重要なのは「六淫(りくいん)」です。
漢方では、外界の環境因子が人体に与える影響を非常に重視しています。一般に季節が変わると、気候もそれに応じて変化します。気候の変化が正常な場合には、「六気」と称される6種類の気候変化となってあらわれ、人体活動を促します。しかし、気候の変化が異常な場合や、人体が六気に対して著しく抵抗力を無くしたときには、六気はそれぞれ、風邪・寒邪・暑邪・湿邪・燥邪・火邪(熱邪)という、邪気となって人体に障害を与えます。これら6つの外邪をまとめて「六淫」といいます。
六淫の特性
一般に人体が六淫を感受した初期の段階では、表証という特有の症状があらわれます。それぞれの症状は、六淫の性質によって違いがあり、治療もそれぞれ異なります。したがって、外邪の特性を知り、臨床症状と六淫とを関連づける判断力を身につけることが要求されます。
風邪 | 風邪に犯されると人体の皮毛やそう理(皮膚や肌、筋肉、臓腑などにある細かい隙間)が開いて外邪が体内に侵入し、悪風や発汗などの症状が出やすくなります。風邪が人体を襲うと人体の上部や外側にある頭部や肌表を犯し、頭痛・鼻・咽・目などの病変を起こすとされています。 風邪を感受すると、発病が急速で進行が速く、患部は固定せずに移動し、症状が出たり消えたりする、という特徴が見られます。また、体がふるえたり痙攣したり、あるいはふらつきを感じるめまいなどの症状が現れます。 |
寒邪 | 寒邪を受けると、人間は局部あるいは全身の冷えを感じます。これは体温が体内の陽気によって支えられており、寒邪がその陽気を障害するからなのです。人体の陽気には、衛気・腎陽・心陽・脾陽・肝陽などがあります。寒邪は肌表や呼吸器官あるいは直接脾胃に侵入してくることが多いので、陽気の中でも特に衛気や脾陽を障害しやすいことが分かります。 脾陽は脾気を温め脾の運化作用を促進していますが、寒邪に襲われてその作用が弱まると、嘔吐・泄瀉・腹部の冷痛などの症状があらわれます。 経絡や筋脈の寒邪による障害は、凝滞と収引の性質が同時に出現することが多く、四肢がひきつって痛み、温めると症状が軽減するのが特徴です。 |
暑邪 | 人体が暑邪に襲われると、高熱・顔面紅潮・大量発汗・口渇・脈数洪大(振幅が大きく速い脈象)などの激しい熱症状があらわれます。 暑邪は人体の皮毛やそう理を開き、津液を消耗させて、身熱・大量発汗・口渇して飲食を欲する・尿赤短少(量の少ない赤い小便が出る)などの症状を示します。また、津液の蒸発が激しいと、気も津液につられて漏れ出してしまうため、気短(呼吸が短促してとぎれとぎれになる)や乏力(気力が萎える)などの症状があらわれるほか、激しい場合は脱水症状を伴って突然混迷し、昏睡に陥って意識不明となることもあります。 |
湿邪 | 湿が肌表に侵入すると身体や四肢が重くだるくなり、関節に停留すると重く痛んで動作が障害され、分泌物や排泄物も濁って汚いものになってしまいます。 湿濁は、清い津液とは違って粘着性が強いと考えられており、湿邪に犯されると分泌物や排泄物がべとついたり、大小便の切れが悪くなかなか拭き取れない、などの症状があらわれます。 湿は重濁で粘滞性の性質を持つので、臓腑経絡中に渋滞すると、気機を阻滞して気機の昇降を失調させたり、経絡の運行を阻害します。昇降の失調には、胃部のつかえ感・嘔吐・大小便がすっきり出ないなどの症状があらわれます。 また、湿は水に似ていて陰邪であるため、人体の陽気を損傷するとされていますが、陽気の中でも特に脾陽を損傷します。脾は、水液を運化する作用を主り、燥を喜び、湿を悪む性質を持つため湿邪が停留すると脾陽が障害されて、下痢・尿量減少・水腫・腹水などの症状があらわれます。 |
燥邪 | 燥邪は乾燥性の強い外邪であり、人体を襲うと陰液を消耗して、潤いを消失させます。肺はみずみずしく潤った状態を好むデリケートな臓器であるため、燥邪に襲われやすく、肺の陰液が消耗すると、宣発・粛降作用は失調し、から咳・痰は少ないかあるいは血が混じる・喘息して胸痛するなどの症状があらわれます。 燥邪が体表や呼吸器を襲うと、口鼻や皮膚は乾燥して口渇したり、激しい場合は髪の毛や皮膚がかさついて亀裂が生じてしまします。また燥邪が、皮毛や呼吸を主る肺と表裏関係にある大腸に影響すると、大便は乾燥して出にくくなります。 |
火邪 | 火熱が人体を犯すと高熱・悪熱・口渇・発汗・脈洪数などの症状のほか、人体上部にある頭や顔面に熱が昇って、口舌生瘡(口腔内や舌にできものができる)・歯茎が腫れて痛む・目が赤く腫れて痛む・頭痛などの症状をあらわします。 火熱には血を動かして出血を促進する性質があります。例えば、これは病症というほどのものではありませんが、入浴や興奮によってのぼせ過ぎると鼻血が出るのは、熱が血を動かす現象の一つです。実際の疾病では、火邪が血分に及んだり脈絡を損傷したりすると、吐血・喀血・鼻出血・血尿・血便・皮下出血・崩漏(不正性器出血)など各種の出血があらわれます。 また、火熱が体内に侵入すると、上焦に位置し陰陽調節の中心となる心に達して神明を障害し、心煩(胸中が熱くほてって落ち着かない)・不眠・狂躁妄動(精神が狂い乱れて、手足をばたつかせる)・神昏譫語(意識が昏迷しうわごとをいう)などの症状を示します。 |
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